【させる指導」からの脱却!主体性を育て、生徒が“自ら勉強したくなる”塾の新常識とは?】セミナーレポート

皆さん、こんにちは!塾エイド事務局です。
2025年10月に塾エイドが開催したオンラインセミナー「『させる指導』からの脱却!主体性を育て、生徒が“自ら勉強したくなる”塾の新常識とは?」の内容を紹介いたします。
講師は、「教育コミュニケーション」をテーマとした弊会セミナーで以前にも好評を博した、一般社団法人 日本教育メソッド研究機構 代表理事の小山英樹氏です。
これからの時代に不可欠な生徒の主体性や意欲をどのように育むか、ということについてお話しいただきました。
ぜひ、お読みください!!
目次
1.主体性とは何か
まず、私たちが育もうとしている主体性とは何でしょうか。
主体性とは、行動する際に、自分の意思や判断に基づいていること、そしてそのことに対し自覚的であることを指します。「自分の意思で動いている」「自分で判断して決めている」と、自分で認知している状態です。
この「主体性」というキーワードは、次期学習指導要領の論点整理にも盛り込まれています。新しい学習指導要領の目指す姿は、「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら自らの人生を切り拓くことができる、民主的で持続可能な社会の作り手」の育成です。

(出典:文部科学省令和7年9月5日教育課程企画特別部会_資料1_P.5
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/101/siryo/mext_00013.html )
VUCA時代と呼ばれる先行き不透明な世の中で、Society 5.0という誰も体験したことがない社会を迎える今、子どもたちには自ら考え、行動する主体性が不可欠なのです。
2.「させる」指導がもたらすもの
塾の先生方の頭や口に、こんな言葉はどのくらい浮かぶでしょうか。
- 塾に来させる
- 勉強させる
- 宿題をさせる
- 合格させる
先生が「させる」立場にあるということは、生徒は「させられる」存在だという位置づけになってしまいます。「させられる」経験を12年間積み重ねた子どもたちが、社会に出ていきなり「自分で考えて動け」「主体的に判断しろ」と言われても、それは困難でしょう。
さらに、「主体性を持たせる」や「自立させる」といった表現は、そもそも矛盾を孕んでいます。自分の足で立つことが「自立」のはずなのに、それを誰かに「させる」ことはできません。
このような「させる/させられる」の関係で育まれた生徒は、動力を持たずに引っ張られることで飛ぶグライダー型の人間になってしまいがちです。私たちが目指すべきは、自分の力と意思で飛び、目的に向かって自ら操縦する飛行機型の人間です。
グライダー型と飛行機型の違い
| グライダー型(主体性が低い状態) | 飛行機型(主体性が高い状態) |
| 理由から行動する 「〜だから」 | 目的から行動する 「〜のために」 |
| やらされているという認識 | 自分の意思でやっているという認識 |
| 他責・依存 | 自己責任・自由・自立 |
| 言い訳・諦め | チャレンジ・創意 |
| デメリット・損失を恐れる | メリット・成果を追求する |
グライダー型の生徒は「~なので」「~だから」「~から」と理由を口にすることが多く、飛行機型では「~ために」という目的を表す言葉が多くなります。
この「させる」という認識と発言を手放すことが、生徒の主体性を引き出すための第一歩です。
3.長崎・自昭館の合宿改革事例
長崎県佐世保市にある学習塾智翔館では、この夏、長年続けてきた合宿の抜本的な改革を行いました。以前の合宿では、子どもたちが全力を出し切れていない、生徒の変容が生まれていないという課題がありました。
改革の柱は以下の三つです。
- AARサイクル(Action-Assessment-Reflection)の徹底従来の「聞く(K)・書き写す(K)・記憶する(K)」というKKKサイクルから、計画を立てる、やってみる(勉強する)、振り返りをするというAARサイクルへ転換。これを徹底的に繰り返す仕組みを導入。
- 共同的な学びの仕組みの導入4人組でグループを組み、勉強の作戦会議をし、それぞれの勉強後にチームで振り返りと発表を行う。
- 教育コミュニケーションの徹底先生の「与える、教える、させる」を止め、「引き出す、任せる、見守る」という関わりに徹する。
この改革に伴い、授業時間を45%削減し、時間管理や学習計画の策定を生徒に任せました。
合宿の結果
結果は劇的なものでした。
- 課題完成合宿:参加者全員が、一人残らず夏休みの宿題を3日間で全て完了。例年の2〜3倍の学習量をこなす生徒も続出。
- 中3チャレンジ合宿:授業時間を大幅に削ったにもかかわらず、最終日テストで例年を大きく上回る平均点を達成。満点生徒数も倍増。
先生が「座れ」「勉強しろ」と言う必要は一切なく、生徒たちが自ら隙間時間を使って勉強し、居眠りや私語、遅刻もなくなりました。挨拶や規律性も向上し、生徒たちが自分たちで学習環境を整えていきました。
この事例は、「できない子、ダメな子なんて一人もいない。ただ意欲や能力を引き出していない大人がいただけなんだ」ということを示しています。
4.主体性を引き出すための「教育コミュニケーション」
主体性を引き出すには、「主体性がない子だ」と見るのではなく、「持っている」と信じ、「引き出す、任せる、見守る」という教育コミュニケーションを徹底することです。生徒一人ひとりは、学ぶ力、伸びようとする意識、必要なもの全てを持っている存在(宇宙)として捉えることが重要です。
日常の関わりを変えるアイデア
小さな関わり方を変えるだけで、生徒の主体性を引き出すことができます。
| 場面 | 従来の「させる」指導 | 主体性を引き出す関わり方 |
| 時間の決定 | 「制限時間は10分ね」 | 「チャレンジ問題、みんな何分欲しい?」 |
| 宿題の決定 | 「残りの問題は宿題にするね」 | 「3番4番残ったわ。どうする?」 |
| 宿題忘れ | 「水曜の授業では必ず出すんだよ」 | 「そうか、忘れたか。どんな気持ち?」「どうしたい?」 |
| 困難な状況 | 「気合入れて最低限のことはやらなきゃ」 | 「そうか、ヘビーなんだね。どんな自分でありたい?」 |
| 進路面談 | 「どうしてA高校なの?(から)」「B高校目指したらどう?(論)」 | 「A高校に行く目的は何?(ため)」「その先にどんな将来を描いてるの?」 |
特に、問いかけを「なぜ?(理由)」から「何のために?(目的)」に変えることで、生徒の頭の中で「から(理由)」ではなく「ため(目的)」の思考が生まれます。
また、主体性へのアクセスに効果的な質問は以下の通りです。
- 「それって誰が決めた?」「それ決めるのは誰?」
- 「本当はどうしたい?」
- 「どんな未来を作る?」「どんな違いをこれから作っていく?」
先生方の役割は、「合格させること」ではなく、生徒自ら合格する主体性を高めることです。その主体性が高まれば、子どもたちは自ら合格し、その後の人生でも自分で道を切り拓く力が身につきます。

(出典:JEMROセミナー資料)
◇ 教育コミュニケーションフォーラム2025 in長崎のお知らせ
小山先生が代表理事を務める日本教育メソッド研究機構は、2025年11月2日(日)に長崎にて「教育コミュニケーションフォーラム2025」を開催します。オンラインでの参加も可能です。本講演で紹介された長崎・智翔館の直江弘明先生も登壇し、「本気で挑む個別的な学びの実現」をテーマにパネルディスカッションや分科会が行われます。
主体的な学びの場づくりにご関心のある方は、ぜひ詳細をご確認ください。
▼「教育コミュニケーションフォーラム2025 in 長崎」詳細およびお申込はこちら
5.質疑応答
講演終了後に寄せられた質問と、小山先生の回答をご紹介します。
質問:
特に個別指導では、宿題などを本人に任せると、本当に何もしないという方向になってしまうので、自分で決めたように見せる、見えるよう誘導する形になっている。目標も見えていない子どもたちに対し、長い目で見て、余裕を持って接したい気持ちはあるが、保護者はテストや入試など、(まず成果を望んでいるので)そこまで待ってはいられないという状況になり、なかなか難しい。どうすればよいか。
回答:
切実な悩みだと思う。一言で言うと、やはりさじ加減でしょう。
今日ご紹介したやり方に、明日から完全に切り替えてうまくいくかというと、そうではない子もいるだろう。自分で決めたことがない生徒もたくさんいると思う。可能な範囲で本人が決める機会を、スモールステップで作っていくことが大事。
例えば、「このページをやる」と決めたとして、「このページの何番までできそう?」といった具合に、本人が決める要素を少しずつ増やしていく。そして、決めたことに対して承認する、決めたことを実行できた時にさらに承認するということを繰り返していく。
これを繰り返すことで、「自分は決めていいんだ」「決める力があるんだ」「決めたことをやり遂げる力があるんだ」ということが少しずつ増えていく。そういう丁寧な関わりができるのが、個別指導の良いところではないでしょうか。
【講師紹介】
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株式会社対話教育研究所代表取締役
一般社団法人日本教育メソッド研究機構代表理事
一般社団法人日本青少年育成協会理事 小山 英樹氏
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1965年 京都府綾部市生まれ
私立高校教諭、民間教育機関役員を経て現職。教育におけるコーチングの有用性に着目し、教育者向け・保護者向けの研修プログラム、人材育成プログラムを開発。一般企業・学校・公的機関・スポーツチーム等を対象とした研修・講演は2,000件、受講者は15万人に上る。
6.まとめ
いかがでしたか?
「『塾に来させる』『勉強させる』『問題を解かせる』『合格させる』。こういった言葉に、まず違和感を抱いて欲しい。(中略)そしてこの「させる」という認識、発言をぜひ手放して欲しい。」
ハッとしました!小山先生のこの言葉を胸にきざみたいですね!
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2025/10/11更新


